「赤ちゃんを母乳だけで育てたい」
「自分の体ひとつで、赤ちゃんの全てを満たしてあげたい。」
これは多くのママが抱く、ごく普通の感情だと思います。
そして…「完全母乳」って言葉、赤ちゃんを育てているママなら誰だって聞いたことがありますよね。
この神がかった言葉、時に、呪いにも似た呪縛で
ある一定数のママ達の心をガチガチに縛っているのも事実だと私は感じるのです。
完全母乳という言葉が神がかっている理由
「完全」という言葉が放つ重圧
- 「完全母乳」という響き
- 「完全」=「完璧」「不足なし」「理想的」といったニュアンスを無意識に感じさせる

つまり「完全じゃなかったら失敗」という、暗黙のプレッシャーを背負わせてしまうことになりがち。
本来、母乳育児に”完全”なんて求める必要ないのに…
- あかちゃんの成長には、母乳だけが全てじゃない
- 体重の増え方、赤ちゃんの個性、ママの体調、生活リズム…全部違って当たり前

なのに、「完全母乳」っていうパーフェクトなゴールが存在することで
「そこに到達できない私はダメなのかも」って必要以上に自身を失わせることも。
神格化された言葉が生む”隠れた自己否定”
- 母乳で育てているけど、体重が少し増えにくい → 不安になる
- 夕方だけ母乳が足りない気がしてミルクを足す → 自己嫌悪
- 混合にしたら、どこかで「負けた」気がする
→これは全部「完全じゃなきゃいけない」という呪縛のせいであり、本当は子どもが元気でママも笑顔で過ごせたら、それが100点満点の育児なのに…!
「母乳神話」とは?どこから来たの?
“母乳が一番”というメッセージの発信源
1981年にWHOとユニセフが共同で【国際母乳育児行動計画】を採択しました。
これがいわゆる「母乳推奨」の公式なスタート地点です。
これによれば…
- 母乳は赤ちゃんにとって理想的な栄養です
- 6ヶ月以降も適切な離乳食と併用して、2歳くらいまで母乳を続けるのが望ましい
- 粉ミルクや代替品の過剰マーケティングを規制する必要がある

といった内容です。
母乳推奨の始まりは”赤ちゃんを守るため”!?
当時、発展途上国では粉ミルクの過剰な販促が問題になっていたそうです。

- 母乳よりミルクが「モダンで賢い選択」だと宣伝され、母乳より粉ミルクを選ぶ家庭が急増
- 清潔な水や衛生的な環境が整っていない場所では、粉ミルクを作る過程で細菌感染が起きて、命の危険性も
だから、WHOは「赤ちゃんの命を守るために、母乳を基本にして!」と世界に呼びかけたわけですね。
ただしこれは、発展途上国や粉ミルクの入手が難しい地域を前提にしたもの。
現代日本のような安全にミルクが使える環境とは、そもそも事情が違うことがわかりますね。
日本での”母乳信仰”の根付き方
日本ではこのWHOの推奨が”絶対的な正解”のように独り歩きしてしまい
医療者や育児本の中でも「完全母乳が理想」とされる風潮が始まりました。
保健指導や母親学級でも「できるだけ母乳で」…という言葉が繰り返されるため
いつしか母乳=母として当然の努め、というような刷り込みがされてきてしまったのです。

かくいうわたしも子どもたちを全員、母乳だけで育てました。
単純に、それが育児の理想だと思い込んでいたからです。
きっと私も、母乳の呪いに取り憑かれた大勢のうちの一人だったことでしょう。
完全母乳ができている私=母としての努めを果たせている、という満足感はあったように思います。
良かったのか悪かったのか、黒か白かで分けることは出来ませんし分ける必要もないのですが
今の私なら、もう少しラクな方法を…考えるかもしれません。
ひと昔前の日本はどうだった?
実は、戦後のベビーブーム期から昭和40年代くらいまではミルク育児が一般的だったようです。
当時は粉ミルクの技術がどんどん進んで、「母乳が出なくてもミルクがあるから安心」という流れが
自然にできていました。
母乳にこだわり過ぎず、「赤ちゃんが元気ならそれでいい」という考え方も
もっと当たり前だった時代です。
それが時代を経て、今は「母乳がいい」と言われる流れに変わってきましたが…
本来は育児の”正解”って時代や文化、そして環境によっていくらでも変わるもの。
にもかかわらず、今の基準だけを”絶対のもの!”みたいに思わされて
ママたちは「こうしなきゃ!」と苦しくなってしまうのかもしれません…
※ここでいう今の基準とは、先に述べたWHOで提言されている母乳推奨のこと。小児科学会もこの推奨に沿っています。
今の日本や世界の育児スタンダードとして、定着している考え方。
ママに対する、プレッシャーとなる言葉集
①「母乳が一番いいからね、頑張って!」
医療者から投げかけられるこの言葉は、悪意がないだけに根強くママの心に刺さります。赤ちゃんにとって母乳が一番!=母乳以外は劣る、という無言の圧力にもなりかねません。
②「出てるのにミルク足すの?」
この何気ない一言にもママは傷つくでしょう。ミルクを足す=努力から逃げたというふうにとらわれがち。
③「完全母乳で育てたの?すごいね」
一人目を完全母乳で育てたら言われる言葉。無意識のうちに、二人目以降も完全母乳で頑張らなきゃいけないとママの脳内で変換される。
④「哺乳瓶に慣れるとおっぱい飲まなくなるよ」
そうなんです、いや実際そうなんですけど💦その恐怖感から、粉ミルクの選択肢が遠のいていき、いつしか母乳育児にガチガチに縛られていく…
⑤「母乳なら免疫がつくよ」
母乳なら強い子になる=粉ミルク育ちは弱い子になってしまう、と不安を煽られる
⑥「うちの子は完全母乳で育ちました(キラキラ〜✨️)」
SNSで見かける眩しいママ達と可愛い子どもたちの写真。それを見て「私も頑張らなきゃ」と自分に無意識の負荷をかける。
⑦「ミルク?まぁ、それもありかもね」
え、だめなの!?と思わされる微妙な間…
⑧「これだけ出てるなら完母でいけるから!!」
母乳がたくさん出る人=完母一択!みたいな、無言の圧力。
どうでしょう?ひとつでも思い当たる言葉、ありましたか?
私は①と③と④と⑧ですね…

わたしは「完母」でがんばるぞー!!!
若かった頃の私に伝えたい。
「もっと自分を解放してあげてもいいし、頑張る自分を褒めていい」
完母こそ正義!とまではいかなくとも、完母でいけてる自分が羨望の眼差しでみられているような気になって、それが無意識に自分に圧をかけていたかもしれません。
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